研究概要 |
ラット摘出膵血管潅流標本を作製し, その標本の表面にscanning argan spectroptotometer(SOSp)のプローブ先端を置き, 腺房細胞内ミトコンドリアのチトクロームa(a_3),bおよびC+C_1の酸化還元位を連続的に記録した. これまで用いてきた標本には十二指腸を含まれていたが, 今回からそれを除き腹腔動脈によって潅流される膵領域の標本とした. この標本の潅流液流量をこれまでの流量の約3倍に上げても, 浮瞳は発現せず, 酸素を十分に含む潅流液で潅流すると, これまで記録されていた高濃度コレストキニン・オクタペプチド(CCKー8)刺激によるチトクロームの同期的な還元反応は観察されなくなった. この結果から, チトクロームの同期的な還元反応の機序が, 限定された酸素供給の下では膵組織内に局所的な酸素不足領域が発生していることにあると推定された. 上のような, 酸素供給が十分に保たれている条件下では, CCKー8による膵外分泌反応(膵消化酵素放出も膵液分泌量)は共に促進された. 潅流液中の酸素を低下させると, CCKー8による膵外分泌反応は著しく抑制され, チトクロームの同期的な還元反応が大きく現われた. CCKー8で持続的に刺激中にウワバインを加えると, 膵外分泌反応は対自の1/7まで抑制された. これらの結果は, 膵外分泌反応を支えるエネルギーは酸化的りん酸化から供給され,エネルギー消費の主役は(Na^+,K^+)AT Paseであることを示している. 特異的基質代謝阻害剤を使った研究によって, エネルギー供給の基質となるものは, ぶどう糖でもアミノ酸でもなくて脂質であることが明らかとなった. ニューロン軸索終末から構成されている下垂体神経葉(モルモット)のチトクロームの同期的な環元変化は, 電気刺激, 外液KCl増加時に認められた. 電気刺激時の還元は外液NaClを低下させると減少した.
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