研究概要 |
細胞が刺激に応答して活動を増加させるさい, 多くは核酸前駆体ーヌクレオチド合成の亢進を伴なう. このときシグナルは直接的に経路の初段階酵素に働き合成促進をもたらしている. 本研究者らは, プリン・ピリミジン合成反応の強力な制御物質であるホスホリボシルピロリン酸(PRPP)の合成調節に注目し, PRPP合成酵素の調節因子を拾い上げ, その増減を組識・細胞についてしらべてきた. 本研究では, 新たに導入した培養細胞系での実験を進展させ, また, PRPP合成酵素の遺伝子解析を行ない, 以下の成績を得た. 1.ラットPRPP合成酵素の活性調節ー合成オリゴペプチドを用いてウサギ抗体作製を試みたが抗血清は得られなかった. ラット酵素アイソザイムの一次構造上の高相同性(後述)からも本酵素の抗原性は低いと考えられる. 2.同上酵素の遺伝子解析ーラットcDNAライブラリーより本酵素cDNAとして異なる二種のクローンを得, 本酵素サブユニットにアイソフォームが存在することを見出した. 共にアミノ酸残基317であり, 異なるアミノ酸残基はわずか13残基であった. 各々の出現には臓器特異性がみられた. 3.培養細胞系における核酸前駆体合成促進機構の解析ーマウスswiss3T3細胞では, 刺激伝達系が異なるとされるEGF, ボンベシン, メリチンがインスリンとの共存下で, FGFは単独で, ヒト胎児線維芽細胞では血清添加で同程度(約2倍)のPRPP代射流量促進作用を示した. EGF, ボンベシンの両系の応答には外液中のMg^<2+>が必要であり, これに対した外液中のCa^<2+>は関与しないことを見出した. これらの増殖刺激に共通した新たなシグナル伝達系, あるいは修飾因子の存在を示すもので, 重要な成積である. 増殖刺激による細胞外からのMg^<2+>流入の増加と細胞内遊離Mg^<2+>濃度の上昇が考えられ, 今後は, それらの確認と, これを促す因子(例えば蛋白質のリン酸化)の検索を中心に研究を展開させていきたい.
|