研究概要 |
マウスまたはヒト線維芽細胞に, Cーキナーゼ活性化因子であるTPAを添加すると, 形態が変化し, またCーキナーゼによるEGF受容体のリン酸化の結果としてEGF結合能の消失が起こる. しかし, 一定時間が経つと, まだ細胞配面にTPAが結合したままであるのに, TPAの影響は消失し, 且つ細胞はTPAに対する感受性を失っている. このような細胞からTPAを分解除去してやると, 細胞は再びTPAに反応するようになる. この現象の解析から, Cーキナーゼの活性化に続く脱活性化状態が存在すること, 及びCーキナーゼ活性化因子の分解除去は, Cーキナーゼ性活に対してかえって積極的な意義を有することを明かにした. 一方, 多核白血球のTPA刺激による活性酸素産新を指標としてTPA作用を解析した場合には, このようなTPA分解除去のTPA作用に対する積極的な役割は認められていなかった. これらの結果から, Cーキナーゼは活性化に伴って消費されてしまい, 新たなCーキナーゼの合成はTPAによって阻害されている可能性などが示唆された. 考えられた可能性の一つを探る目的で, Cーキナーゼ精製標品を用いた試験管内反応による解析を試みたが, 精製標品からカルパイン活性を除去することが出来なかったため, 有意義な結果を得ることが出来なかった. TPAの分解除去に関わる酵素として, 動物血清中に新らしいエステラーゼを見出し, これをマウス血清より精製してその性質を明かにした. 同時に各種動物の血清, マウスの各臓器及びいろいろな系統のマウスの血清におけるこの酵素の性活の分布を明かにした. 精製された酵素は上記の研究に利用された. また, 動物血清中での酵素の活性を調節していると考えられる脂質性のエステラーゼ阻害物質を見出し, その部分精製を行い, その性質を明かにした.
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