研究概要 |
肝臓は生体の中心的臓器であり多様な機能を営なみ,また食事性影響を調節している.これらの機能は主に実貭細胞で行なはれているが,肝組織はこ他内皮細胞,胆管上皮細胞,結合組織細胞等の非実貭細胞と接触し,またコラーゲン,プロテオグリカン,フィブロネクチン等の細胞外マトリックスとも接触している.この様な復離な組織での肝機能を研究するには我々の開発した肝細胞の初代培養法が最も適当であり,肝実貭細胞の機能(増殖も含め)に対する非実貭細胞の影響を検討した. 1)未熟肝細胞の増殖と分化に対する成熟肝細胞接触の影響ーーー新生肝細胞は分化の代表マーカーであるトリプトファンオキシゲナーセを未だ発現していない. しかし増殖因子なしで自律増殖する. この細胞と成熟肝細胞を混合培養すると未熟肝細胞の増殖が止まり,マーカーを発現し分化する.この増殖因子は培地に分泌されるが,分化機構は成熟肝細胞膜にある不安定な因子によっている事が判明した.この様な機構で肝細胞分化は波紋的に拡がる. 2)成熟肝細胞の増殖に対する非実貭細胞の促進効果ーーー成熟肝細胞は静止状態にあり,我々の見出した血小板増殖因子により増殖する.しかしこの増殖因子が無くとも非実貭細胞(多分内皮細胞)との混合培養により増殖させることが出来る.これは非実貭細胞膜と実貭細胞との接触による結果であり,この膜因子は酸,熱,トリプシン処理に不安定である. また接触する細胞種の特異性も高い. 3)肝細胞の組織社会学的考察ーーー以上の結果から肝再生,肝分化には肝組織中の非実貭細胞がその実質細胞との接触により大きな影響を与えていることが益明確になった.この機構が細胞の形態や遺伝子情報の発現則御を介したものと考えられ,今後は遺伝子レベルでの解析を行なう予定である.
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