研究概要 |
1.系統維持のための日常的業務として(1)生後経時的に老化度判定基準に基づき老化度評点をつけ,その加齢に伴う変化の観察(2)平均寿命の算定(3)死亡例の病理学的検討を行い,SAMーPの7系統,SAMーRの3系統が順調に維持され, 夫々の特徴的な老化病態が安定して発現していることが確認された. 2.^<125>Iでラベルされた老化アミロイド前駆物質apoAーIIをR/1系およびP/1系マウスの静脈内に投与しその代謝動態(クリアランス)を調べたところ,促進老化系のP/1においてapoAーIIクリアランスの加齢に伴う特異的亢進が認められ,apoAーIIの構造の違い(P/1はpro^5ーapoAーII,P/1はgln^5ーapoAーII)とクリアランスとの間には直接の関連はみられなかった. 3.骨粗髪症系P/6の低骨量の成因にCa代謝の異常が関与しているか否かを探るために血中Ca,無機燐,副甲状腺ホルモン,VitD_3誘導体の濃度を測定したが,これらから低骨量を裏づけるデーターは得られなかった. このことはCa調節ホルモン以外に何らかの重安な要因が存在することを示唆する. 4.P/1系を用いてIn vitroの研究結果は加齢に伴ってみられる急速な免疫機能の低下,中でも特に抗ヒツジ赤血球一次抗体産生能が2ヶ月齢という早期に著しく低下していることが明かとなり,この機能低下がヘルパーT細胞系の異常に関連があることが示唆された. 5.学習・記憶障害P/8系の行動薬理学的研究と更に詳細に行い,記憶成立過程のどの過程に障害が生じているかを検討したところ,記憶保持機能にはほとんど異常なく,むしろ獲得過程に障害があることが判った. 次に脳を16ヶに細切し,各部位のモノアミン含量を測定したところ,ドーパミン,セロトニンに関してはP/8系で正常のR/1系に比しほぼ全部位で高値を示した. ノルエピネフリンも全般に同様の傾向を示したが海馬,視床はむしろ有意に低値し,P/8系で,学習・記憶障害に重要な大脳辺縁系においてノルエピネフリン系の機能低下が存在することを示唆する.
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