研究概要 |
1.回虫に関する研究 当初の研究計画に従い、回虫成虫筋ミトコンドリアよりNADH-チトクロムC還元酵素(複合体【I】-【III】)とコハク酸-ユビキノン還元酵素(複合体【II】)の単離法を検討し、界面活性剤による可溶化と硫安による分画,界面活性剤存在下のゲルろ過などによって両複合体の単離に成功した。これらの標品についてチトクロム成分の局在性を分析した結果チトクロム【b_(558)】は複合体【II】に含まれている事が判った。また我々がすでに確立した高速液体クロマトグラフによるミトコンドリアのチトクロム系の分析法を用いて回虫成虫筋ミトコンドリアのチトクロム成分の構成を調べたところ複合体【II】のチトクロム【b_】558が主成分であり、チトクロム酸化酵素(複合体【IV】)はほとんど含まれていない事が明らかになった。複合体【II】の含量の多い事はSDSポリアクリルアミド電気泳動で主なバンドとして検出される点からも確認され、その蛋白量はミトコンドリア全体の8%と算出された。また複合体【II】の単離法が他種にも適用できる事が確認された。 2.肺吸虫に関する研究(ウエステルマン肺吸虫) 肺吸虫成虫よりミトコンドリアを調製し、各種脱水素酵素活性,チトクロム酸化酵素活性およびチトクロム類の分光学的な解析より肺吸虫のミトコンドリアが好気的呼吸を行う哺乳類と嫌気的呼吸を行う回虫成虫筋ミトコンドリアの中間的性質を持っている点が明確になった。また上記の方法で単離した複合体【II】についてその活性,阻害剤の影響,サブユニットの分子量を調べた結果、複合体【II】も哺乳類と回虫のそれの中間的な性質を持っている事が判明した。 3.貝類に関する研究 平巻貝でコハク酸の蓄積が観察され、嫌気的エネルギー代謝の存在の証拠が得られた。
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