研究概要 |
ガスクロマトグラフ・質量分析計(JEOL JMS-DX302およびJMA-DA 5000)の設置および予備的調整を終了して、習熟運転を開始した。同機器は高性能を確保するために極めて高度にコンピュータによる自動制御が導入されており、機器の運転自体は自動化されているものの、コンピュータ制御の習得に可成りの訓練を必要とする。DNA-adducts,hemoglobin adducts測定のために必要な手段としてポリフルオロケロシンを標準品とするキャリブレーション、低分解能測定に必要なデータ処理、低分解能測定を基礎としたSIMデータ処理に基く定量分析、ならびに物質の構造解析と同定に用いられる高分解測定とそのデータ処理(以上いづれも電子衝撃型イオン化法による)、化学イオン化法、および機器の保守管理上重要なイオン源の洗浄と組み立てについて訓練を進めている。また、実験動物の低濃度・反復有機溶剤蒸気曝露に必要な蒸気曝露装置の調整を行い、被検有機溶剤であるスチレンモノマー,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンについて、それぞれ労働衛生上の許容濃度の1/10乃至10倍程度の範囲の濃度を想定して検討を進めた結果、それぞれ数ケ月にわたって20ppm〜50.0ppmの範囲で、変動係数10%以下の精度管理で反復発生させ得ることに成功した。あわせて労働者の曝露濃度(一日作業時間内時間加重平均値)の測定に必要なバッシブ・サンプラーについて検討を進め、東洋紡製活性炭膜K-フィルター1500が吸着材として最適であって、同活性炭膜を用いる場合、90%程度の高湿度下でも8時間以上にわたって溶剤とも定量的に吸着されること、自然脱着は無視できるほど半減期が長いこと、特に重合が懸念されるスチレン・モノマーも表面で重合しないことを確認した。
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