研究概要 |
DNA付加物形成の条件および被検者集団を確定する目的で末梢血リンパ球を検体とする姉妹染色分体交換率についての職場調査を行なった。ベンゼン(50ppm)曝露男子労働者,トリクロロエチレン(平均7ppm)曝露労働者(男女とも)、テトラクロロエチレン(17ppm)とトリクロロエチレン(8ppm)曝露労働者(男女とも)を対象にした調査によれば、いずれの曝露条件下においても姉妹染色分体交換率(SCE)の上昇は認められなかったが、喫煙者ではそれぞれに対応する非喫煙者に比してSCEの上昇を認め、喫煙は交絡因子として重要であることが明らかとなった。ジメチルホルムアミド(DMF)曝露を受けている非喫煙・非飲酒女子労働者と性・年令・居住地について対となる非曝露女子労働者の計22対を高濃度群(DMF5.8ppm)8対、中等度群(0.7ppm)5対、低濃度群(0.3ppm)9対に分けて観察した結果では、DMF曝露濃度が高い程曝露群と非曝露群間のSCEの差は大きくなり、DMFは人体において変異原性を示す判断された。脂環化合物であるシクロヘキサンを溶剤とした接着剤を用いる作業に従事し、平均27ppm、最高274ppmの比較的高い濃度に曝露されている女子労働者9名(うち喫煙者4名)と性・年令・喫煙について対となる女子非喫煙者9名についてSCEを比較したところ、曝露の有無にかかわらず喫煙によりSCEの上昇をみたが、シクロヘキサン曝露によるSCEの上昇は認められなかった。さらにメタクリル酸メチルを用いて有機ガラスを作成する作業に従事し、0.9〜71.9ppmのメタクリル酸メチル蒸気に曝露されている男子労働者38名と非曝露男子11名についてSCE調査を行なった結果でも、喫煙によるSCEの上昇は認めたがメタクリル酸メチル曝露と対応したSCEの上昇は観察されなかった。
|