研究課題/領域番号 |
61440041
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
朝長 正徳 東京大学, 医学部, 教授 (10072977)
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研究分担者 |
村山 繁雄 東京大学, 医学部, 助手 (50183653)
池田 和彦 東京大学, 医学部, 助手 (30124663)
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キーワード | アルツハイマー病 / アルツハイマー原線維変化 / PHF / β蛋白 / 免疫組織化学 / ダウン症 |
研究概要 |
本研究の目的は老人脳に沈着し、その出現と痴呆とが密接な関係にあるところの、アルツハイマー原線維変化および老人斑の本体と出現機序、さらにそれによる脳の代謝破綻へのプロセスを超微形態、免疫組織化学、生化学的手法および培養神経細胞を用いて解明することにある。今年度の知見は以下のとうりである。 1研究方法:アルツハイマー病(AD)、進行性核上生麻痺(PSP)、ピック病およびダウン症で死亡した患者および対照老人の剖検脳およびラットの脳を用いた。(1)抗PHF、抗タウ抗体を用いた免疫反応を調べた。(2)ラットの神経細胞培養を行い、それにアルツハイマー病脳抽出液を加え、細胞の生存および神経突起伸長を調べ、抽出液中の因子の同定を試みた。(3)β蛋白抗体を用いてダウン症の脳を免疫組織化学的に調べた。 2結果、(1)抗PHF、抗タウ抗体を用いて、AD、PSP、ピック病の脳を調べると、PHFよりなるアルツハイマー原線維変化(AD)、straight tubulesよりなるアルツハイマー原線釣変化(PSP)、ピック球いずれも陽性であり、これら微細構造の違う細胞内封入体が基本的には同じ蛋白質に由来する可能性があることがわかった。(2)生後0月令のラット大脳皮質の神経細胞にAD脳の抽出液を加えると著明な神経細胞生存および突起伸長の促進がみられたが、これに正常の脳の抽出液を加えると著明に抑制された。このことより、AD脳では神経栄養因子が増加しているのではなく、正常の脳にある抑制因子が欠如している可能性があり、現在この因子の同定を行っている。(3)35才のダウン症の脳についてβ蛋白抗体を用いて調べると、すでに免疫反応が高度に陽性であった。しかし、これは典型的な老人斑以前の形態(diffuse plaque)を示し、またアルツハイマー原線維変化もまだ認められず、したがって、β蛋白沈着がAD脳でも初期病変の可能性がある。
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