研究概要 |
昭和62年, アルツハイマー病(AD)脳中のアミロイドタンパクについて研究し, 次の二点の成果を上げた. 1), 老人斑を特異的に認識するモノクローナル抗体(Hyー20ー54ー16ー3L)を用いて,AD脳中から老人斑関連タンパクの分離精製を行ない, アミノ酸組成を同定した. このタンパクは分子量30Kd,等電点6.5〜7.0で,アスパラギン酸,グルタミン酸,グリシン等のアミノ酸に富んでいる. このタンパクはこれまで報告された脳アミロイドタンパクや老人斑構成タンパクであるβータンパク,アミロイドPコンポーネント,補体成分等の抗血清とは反応せず,これらタンパクとは異なるタンパクであると推定される. 現在,このタンパクの構造を解析しており,今後,老人斑形成過程におけるこのタンパクの役割について検討してゆきたい. 2), Kangらの発表した老人斑アミロイド前駆体タンパクの脳内局在を免疫組織化学的に検索した. この前駆体タンパクのmRNAはニューロン,グリア等に局在ちるとの報告があるが,実際のタンパクの実在が証明されているのはβータンパクのみである. われわれは前駆体の3ヶ所の合成ペプチドで兎を免疫して抗体を作り,アルハイマー脳の免疫化学を行なった. 細胞外部分抗R35(274ー286)抗体は脳の成分と反応しない. 抗R36(527ー540)抗体は抗βータンパク抗体と同じパタンでアミロイドと反応する. 興味深いのは,抗R37(681ー695,C末端)抗体では老人斑円の神経突起変性だけが反応する. FITC標識抗βータンパク抗体で二重染色すると,抗R37抗体に反応する顆粒はアミロイド斑の中に局在する. C末端のR37ポリペプチドが元々神経突起内にあったか,血管から由来したか不明であるか,アミロイド形成時,前駆体タンパクより切り離され,アミロイドに入らないと分った.
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