研究概要 |
[目的]組織修復における増殖因子・受容体の役割を明らかにするため本年度は主に以下の2つの実験系を用いて研究を行った. 1.ヒト線維芽細胞由来の培養細胞を用いたヒト水疱中に存在する増殖因子の検討 2.各種病態での細胞増殖と増殖因子受容体との関連 [方法]1.ヒト線維芽細胞はヒト皮膚より得られた2種類の細胞株を用い, II度熱傷患者より得られた水疱液 成人男性より得られた血清と血漿 牛胎児血清(FCS)を加えたDMEM培養液で培養し, 更にEGFを最終濃度0,1,10,100〓〓/mlとなる様に添加し,3日後に細胞数の計測を行った. 2.正常ヒト皮膚,psoriasis vulgarsおよびBowen病患者より得られた病変部位の皮膚を3気圧下のBrdU添加10%FCS含有DMEM培養液中で培養し,新鮮凍結切片およびアルコール固定パラフィン切片を作成し,各々をヒトEGF受容体およびBrdUに対するモノクローナル抗体を用いたABC法で染色しEGF受容体とS期細胞の分布を検討した. [結果]1.水疱液を添加した群では細胞数は2〜3倍に増加し増殖促進作用が認められた. その作用はFCSよりも強力でヒト血清や血漿の作用に匹敵した. 外因性にEGFを投与すると水疱液では反応し,更なる増殖促進作用が認められたが,ヒト血清および血漿ではほとんど認められなかった. 2.EGF受容体の分布は正常皮膚では基底および傍基底細胞に,psoriasis vulgarisおよびBowen病患者の皮膚病変部位ではほぼ全層にわたっていた. S期の細胞は正常皮膚とPsoriasis vulgarisでは基底層に,Bowen病ではほぼ全層に認められた. [結語]水疱液中には増殖因子が存在しているがEGFは相対的に不足しており外因性に投与することにより増殖作用は更に促進された. 細胞増殖とEGF受容体の関連は各種病態による異っており,その病態と深く関わっていることが示唆された.
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