研究課題
胆道閉鎖症を対象として、その根治手術の際の胆道再建に使用するヒト胆管上皮培養細胞を用いたハイブリッド型人工胆管の作製を目的とし、昭和61年度はその第一段階ともなるべき、ヒト胆管(胆嚢)上皮細胞のprimary cultureおよびその継代化の実現、及びその際の増殖因子について研究を行った。手術によって得られた摘出胆嚢から正常胆嚢上皮細胞の初代培養を行い、その増殖及び培養維持条件を検討した結果、ヒト胆嚢上皮は数回継代可能であり、Epidermal Growth Factorを添加する事により増殖する事、また、培養中に混入してくるfibroblastを分離し、その2日培養後の上清を胆嚢上皮培養系に加えると、胆嚢上皮細胞がさらに増殖する事が確かめられた。さらに、付随して行った肝細胞の増殖に関する基礎実験により、既知の液性の増殖因子以外にも、肝非実質細胞(類洞内皮細胞、Kupffer細胞など)を加えて混合培養する事により、肝細胞の増殖が促進される事が確認されたので、これらの事実を踏まえ胆嚢上皮細胞の培養方法を確立し、ハイブリッド型人工胆管の試作を行っていく予定である。培養胆嚢上皮細胞は、サイトカラシン染色、アルシアンブルー染色にて陽性を確認したが、さらに確実なcharacterizationを行ってin vivoで増殖させ、Tefron Gore-Tex等の人工素材への接着を検討したうえで、人工胆管を試作し、それを用いての実験動物への胆道再建実験を施行する予定である。