研究課題
落射式螢光顕微鏡を用いての組織DNA定量法には、10μの厚切り切片を用いて組織標本上で行う定量法と、細胞をバラバラにして細胞単位で行う定量法とがある。前者には組織所見と一対一の対応をさせながらDNAが測定できるという長所があるが、測定可能な細胞数が少ないという欠点がある。一方、後者には多数の細胞のDNA測定が可能であるという長所の代りに、組織所見との一対一の対応が難しいという短所がある。組織DNA測定研究においては、両者の測定値の一致度を確認しておくことが大切であると考えられる。器械の購入以来、私共は先ずこの問題に焦点を絞り、観察細胞数の少い組織切片上のDNA測定法でも、分離期の細胞のみのDNAを測定すれば、ploidy patternが正確に表現されうることを確かめた。私共の中心的な研究課題の1つである大腸腺腫内の異型度のDNAによる再分類のために、組織標本上のどの部位のDNA値がいくらであるかを測定することが最も大切であるからである。現時点で以下の事が明かになった。(1)mild displasiaの腺腫の部分はdiplaidを示していた。(2)severe dysplasia(癌)の部分はaneuploidを示していた。(3)amoderate dysplasiaの部分にはdiploidとaneuploidを示すものがあり、moderate dysplasiaが腺腫の組織レベルでの前癌病変であるという、従来からの私共の主張が裏付けられたが、今後より多くの症例による詳細な分析が必要であろう。de novo癌と考えられた陥凹型早期癌の一部にもdiploidを示す部分が含まれている例があり、この病変における腺腫の混存が示唆された。de novo癌の判定にもDNA測定は有力な方法となる可能性がある。
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