研究概要 |
昨年度に引き続き, 大腸腺腫の異型度と核DNA量の関係について検討した. 経度異型腺腫では1列を除いてすべてdiploid patternを示した. nonーdiploid patternを示した1例では,HE所見とnonーdiploidを示した部位とを対比した結果, 微少な中等度異型腺管の存在が確認された. HE所見と対比して検索できる切片法の特色が, これによって実証された. 中等度異型腺腫でanuploid patteinを示すのは約15%,高度異型(腺腫内癌)では約54%であった. 組織学的に癌であってもdiploid patternを示す例があるが,中等度異型腺腫の中に少なくとも15%の癌が含まれていることが明かになった. flat adenomaについても同様に切片法(4μ)によって検討した. 軽度異型腺腫は80%がdiploid,中等度異型に近い腺腫1ヶがnonーdiploidであった. この検索結果からは,flat adenomaの中の中等度異型を示すものの大多数はすでに癌である可能性が示唆された. いわゆる'denovo'癌の初期像として中等度異型を示すflat adenomaが重要であると考えられる. 10年以上経過した潰瘍性大腸炎の内視鏡検査時に得られた生検標本の4μ,7μ切片について,核DNA定量を行っている. 組織学的にdysplasiaが認められる病変部にはnonーdiploid pattrnが認められた. さらに,組織学的に炎症もdysplasiaも認められない切片にもnonーdiploid patteinの認められる症例があった. これが形態学的変化の現れる前のdysplasiaの初期像であるか否かは,われわれが以前より行っている粘液組成の成績と対比しつつ経過と追跡する必要があると考えられる.
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