研究概要 |
昭和62年度における研究実施計画に対する研究実績を要約すると以下の通りである. 1)HerreraおよびThomasのカニューラを用いて引続き慢性膵臓胃瘻犬を作製し, 意識下膵外分泌動態に関する種々の検索を施行したが, このモデルの作製成功率は90%以上に及び, 意識下膵生理に関する研究は, 内外を通じて当教室が最も進んでいると考えられる. 2)慢性膵胃瘻犬を用いて, 膵液によるnegative feed back controlに関する研究を行ない, その存在の有無や, 種差の問題について検討し, さらに体液性因子で膵液分泌に深く関わっているCCKやPPが, このfeed back controlに関与する可能性についても検索を進め, 興味ある知見を得た. 3)意識下で膵液, 胃液のみならず, 胆汁分泌をも連続的に観察できるモデル, すなわち, HerreraおよびThomasのカニューレを駆使して, 慢性胆膵胃瘻犬の作製に, 内外を通じて初めて成功した. 慢性膵胃瘻犬および慢性胆膵胃瘻犬は, 熟練した外科医の技術および術後管理に対する根気と情熱があってこそ初めて可能なモデルであり, 特に慢性胆膵胃瘻犬は, 食事負荷, 十二指腸負荷, 外因性負荷等が意識下で容易に施行でき, 肝・胆・膵・胃・腸・臓器相関機構及びそれに対する消化管ホルモン, 神経性因子の関与を解明する上で, 最適のモデルであると考える. 現在, 当モデルを確実に作製し得る様になっており, 6ヶ月以上の長期生存率をみるまでに至り, 肝胆膵生理に関する新しい情報を得つつある. 4)レーザードップラー血流計, 超音波トランジットタイム血流計の併用により, 臓器血行動態を有機的に捉えることが可能になり, 現在, 種々の消化管ペプタイドの臓器血行動態に及ぼす影響を観察するのみならず, 消化器手術中における術中臓器血流測定を行なうことにより, 術式の選択や予後の判定に寄与し, さらに, イヌを用いて電極を植め込むことにより, 意識下における臓器血行動態を観察し, 新しい知見を得つつあるところである.
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