研究概要 |
細小血管をレーザー照射によって吻合可能なこと,その吻合部の強度試験により予想外に強固に癒合していることや, 組織学的所見においても従来からの縫合系のみによる吻合部よりも良好に治癒過程が進行している事実を確認し,実地臨床面に応用した. 現在までに72例(男51例,女21例)に対して,レーザーによる血管吻合を実施した. 年齢は18〜80歳(平均56歳)であった. 血管吻合部の長さは8〜48mm(平均17mm)であり,レーザー出力は30〜50mW(平均40mW),照射時間は25〜360秒(平均5.7秒/mm)であった. 吻合法は端々吻合が最も多く,ついで端側吻合,側々吻合の順であった. 動脈や静脈壁の所見は症例によりかなりの変化が認められたが,石灰化やアテローム斑が存在する場合には可及的これを切除して,吻合部の断端をトリミングする必要があった. 一方では, 血管吻合部での組織温度を測定したが,平均50℃以上を呈していることが判明した. 全症例での術後経過は良好であり,アンギオ所見で吻合部の開存が証明されており,現在までに後出血や動脈瘤形成などの合併症はみられていない. これらの症例の中には冠動脈バイパスをレーザー吻合で実施した症例が含まれている. 症例は52歳男,冠動脈造影で左冠動脈主幹部に90%狭窄,前下行枝に99%,第一対角枝に75%の有意狭窄が認められた. 本症例ではこれらの三枝病変に対して三本のバイパス手術が実施されたが,前下行枝へのバイパスのみは左内胸動脈を使用して,レーザーによる吻合が安全に施行された. 本症例も術後経過は順調である. 以上のように細小血管の血行再建術にはレーザー吻合術が容易でしかも安全に実施でき,吻合に要する時間も縫合糸によるよりも1/2〜1/3短縮できることか臨床例においても立証された.
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