研究課題
本年度は、空気駆動式全人工心臓の駆動制御に必要な人工心臓機能監視装置の性能の検討と、臨床使用を考慮し、解剖学的FITTINGに優れた日本人用全人工心臓の試作と慢性動物実験による検討を行なった。人工心臓システムの制御性と操作性の向上のために、駆動ラインに組み込んだ空気流量計の、1)非侵襲的かつ連続的な人工心臓機能の監視、2)自動完全駆出、完全充満(Full-fill・Full-empty)モードでの駆動、3)人工心臓拍出量の計測、への応用について模擬回路および動物実験で検討した。その結果、空気流量計により、正常駆動時と人工心臓異常時に特徴的な流量波形が検出され、人工心臓の駆動状態の監視と異常の診断への応用の可能性が示唆され、また、空気流量計からの信号を用いて、自動Full-fill・Full-emptyモードでの駆動が安定して行なわれた。加えて、拡張期の空気流量波形を解析することにより求めた人工臓拍出量の計測は、電磁流量計による測定との間で高い相関と、ほぼ1:1の関係を示すことを明かとした。日本人の胸腔内の心臓周辺の寸法を核磁気共鳴断層撮影像を基に測定し、ヒトの解剖学的特徴を考慮してヒト用空気駆動式全人工心臓を試作した。抗血栓性の向上と胸腔内の寸法の制限に対処するために、大血管および心房と人工心臓を結合し、同時に人工弁を把持するコネクターのデザインも同時に改良した。体重53kgの子牛を用いた慢性動物実験でシステムの評価を行なったところ、胸腔内への装着は容易であった。また、術後急性期は中心静脈圧、左房圧、大動脈圧などの臨床的に一般に使用されるモニタを用いたが、それ以後は上述した人工心臓機能監視装置からの信号と駆動装置から得られる駆動圧波形の観察のみで循環動態の管理を行なっている。実験動物は術後23日目現在元気に生存しており、システムの優秀性が示された。
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