研究概要 |
HPLCを用いて, ヒト尿中マンノース濃度の定量の結果, 186例中80例で尿中マンノースの存在を確認できた. うち, 濃度測定が可能であったのは24例であった. その値は3例において60μg/mlを超したが, 他はすべて20μg/ml以下であった. 臨床分離大腸菌26株について調べた結果, マンノース感受性株は11株であった. これらの株について最小赤血球凝集阻止マンノース濃度を調べたところ, 7株ではその値が20μg/ml以下であった. 従って尿中に存在している単糖としてのマンノースだけでも細菌の上皮レセプターへの付着を阻止する可能性が示された. しかしマンノースは他にもオリゴ糖や糖蛋白として単糖よりも多量に存在している事が予想され, この点に関する検討を今後続けていく予定である. 次に細菌側の因子として線毛保有率に関し, 4株の大腸菌について, 尿及び2種の培地内での生育条件下で, その変化を観察した. その結果, 同じ株を, 同一人の尿中で培養しても, 尿の採取時期が異なると, 線毛の保有率は異なる事が判明した. 又, 尿路感染を頻回にくり返す患者尿中では, 常に50〜60%以上の保有率を示す様になり, 株によってはむしろ培養液中で培養したものより高い保有率を示す事がある事も判明した. 以上にり, 尿路感染発症には, 細菌側因子である線毛の形成そのものに影響を与える何らかの尿中因子が存在する事が示唆された. 更に, 非特異的免疫機構に関与すると考えられくファイブロネクチン(FN)の尿中微量物質としての意義をも検索した. その結果, モノクローナル抗体で測定し得る尿中FN様活性物質は平均0.5μg/ml程度尿中に存在している事が確認された. 完全な型でのFN0.5〜1.0μg/ml溶液中で前処理したSta aureusは, 膀胱上皮細胞のcell lireへの付着率が低下する事が実験的に示された. この物質は, 膀胱内でのオプソニン効果としても期待され, in viroでの検討を含め, 詳細な検討を予定している.
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