研究概要 |
1.局所レーザー温熱作用に関する実験的研究:Nd:YAGレーザーの二分配オプチカルユニットと接触照射可能なセラミックス製レーザー導光プローブの関発を終了した。これらを用いて、レーザー温熱効果に関する実験的研究を行った。その結果、1)ラット舌組織内への刺入接触による局所レーザー温熱(レーザーサーミア)の効果的作用領域は、レーザープローブ周囲の約1.5cmの球状部分であることが、サーモグラム解析成績と病理組織学的検索で明らかとなった。また、2チャンネルによるレーザーサーミアで、より広範囲の三次元的分野が加温可能となり、かつ局所循環動態も一層憎進し得ることが判明した。2)レーザーサーミア後のアラキドン酸カスケード代謝物に関する生化学的研究では、5-HETE,12-HETE,15-HETE,PG【E_2】などが加温初日と3日目で、コントロールに比して幾分増加するが、8日目には、コントロールと大差ないことが明らかとなった。3)ヒト甲状腺癌移植ヌードマウスに対する本レーザーサーミアの応用実験で、5匹中3匹に肉眼的、病理組織学的に著るしい腫瘍効果のみられることが判明した。 2.局所温熱エアロゾル作用に関する実験的研究:温熱エアロゾル発生装置の改良が終了し、これによるラット気管粘膜の繊毛運動への影響を光電変換法で検索した。その結果、1)43℃〜45℃エアロゾル環境下では、in vivoにおける繊毛運動に対しては、全く影響がみられない。2)粘液繊毛輸送機能の障害も観察し得ないこと等々が判明した。3)これらは、光顕的、電顕的観察でも立証された。鼻腔に対する局所温熱エアロゾル噴霧によって、下甲介粘膜の循環動態の増進と温度上昇が観察された。以上のように、両ハイパーサーミアは、上気道粘膜組織における血行動態の増進と代謝機構の一部改善にともに関与し得ることを明らかにした。新しい局所温熱療法の基礎的研究の一端が明らかとなった。
|