研究概要 |
1.局所レーザー温熱作用に関する研究: NdーYAGレーザー源を二分配し, かつコンピューター制御機構を組み込んだ導光ユニット全方向へレーザー照射可能な刺入プローブ開発した. これを用いて, レーザー温熱作用に関する基礎的, 臨床的研究を行った. その結果, 1)家兎舌組織内でのレーザー刺入照射後の組織反応は, 極めて軽微であり, 1週後のファイブロネクチンやラミニンの組織化学的所見やハイドプロリン定量成績からも裏付けられた. 2)ヒト甲状腺癌移植ヌードマウスに対するレーザー温熱効果に関する実験で, シスプラチン化学療法剤との併用が有用なこと, その理由として, レーザー温熱時には, 腫瘤の中心部よりも周辺部で著しい血流増加がみられることによることも判った. 3)鼻茸および腫大下甲介に対するレーザー温熱療法で, 鼻閉の改善と病的粘膜腫大の著るしい縮少が, また, 3日目の摘除試料で間質の線維化促進像やHETEs, LTB_4, PGE_2などのアラキドン酸カスケード代謝物の増加所見等が認められた. 2.局所温熱エアロゾル作用に関する研究: 粒子径5〜10μ, 43℃の温熱エアロゾル発生装置を完成した. これを用いて基礎的, 臨床的研究を行った. その結果, 1)ヒト鼻粘膜血管由来の内皮模胞とヒト喉頭癌移植株(HEPES)の両者は, 43℃, 温熱環境下で10時間, 20時間後には増殖が有意に抑制されることが判明した. 2)本温熱エアロゾル吸入により鼻アレルギー症例の下鼻甲介粘膜の循環動態に著るしい変化が観察された. とくに抗原誘発鼻粘膜例で顕著にみられた. 3)鼻アレルギーと感冒時鼻炎症例に対するエアロゾル温熱療法で, それぞれ有効率55%, 72%が得られた. 以上のように, 上気道粘膜病態に対する温熱療法は, 局所循環動態や代謝の変化をもたらすことによって効果をしめす新理学療法として臨床的に大いに期待される.
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