研究課題
内・外二つの柵よりなる血液網膜柵の破錠は、共に、硝子体蛍光測定法において異常蛍光漏出として知ることが出来る。この、内・外血液網膜柵障害のそれぞれが硝子体蛍光測定法に及ぼす影響について検索を行なった。内血液網膜柵障害の臨床モデルとしてベーテェット病を、外血液網膜柵障害のモデルとして原田病を選び、それぞれ7例10眼、14例28眼について検索した。内血液網膜柵障害では、蛍光色素静注後15分ですでに硝子体腔への蛍光漏出が認められた。また、この疾患で見られる柵の障害はその實解期にも見られ、永続的であることが明らかとなった。一方、原田病においては、蛍光漏出は極めて緩徐であり、蛍光色素静注後一時間ではコントロールに比して有意の蛍光漏出は認められず、その二時間後の測定で異常蛍光漏出が確認された。この異常蛍光漏出は治療の状態を極めて鋭敏に反映し、ステロイドの治療により短期間で正常に復した。この臨床実験により、内・外血液網膜柵の障害はその病態生理において基本的に差異のあることを示唆しており、今後の硝子体蛍光測定法の臨床応用に有用な知見と判断される。動物実験においては外血液網膜柵と複細胞の関係が柵機能に及ぼす影響について検索中である。網膜色素上皮と同時に視細胞も障害されると内血液網膜柵類似の蛍光漏出を生ずる。この事実は炭素酸ソーダを、いた実験的網膜色素変性症の実験で明らかとなった。現在、我々は視細胞のみを選択的に障害する実験モデルを開発中である。一つは、YAGレーザーを用いて硝子体腔に衝撃波を発生させ、視細胞外節のみを障害する。一つは、メラトニンを有色家兎に投与して網膜変性症を〓起させるものであり、いずれも全く新しい実験モデルであり、現在、病理組織学的に検索をし、その妥当性について検討中である。この新しい実験モデルについては、本年5月、日本眼科学会総会において発表予定である。
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