研究概要 |
1.口腔扁平上皮癌患者の末梢NK細胞の表現形質と機能から見た特性を解析した結果,患者の末梢NK細胞の活性に欠損のあること,また腫瘍の病態各時期にある患者群と健常人対照との間にはNK細胞の表現形質にかなりの相違の存在することを明らかにした. 2.口腔癌患者の末梢NK細胞について,NK細胞の標的であるKー562細胞に対する結合能および細胞障害能を単一細胞測定法を用いて測定し,BRMの1つであるOKー432の効果を解析した. その結果,OKー432投与は末梢NK細胞のKー562細胞に対する結合能に影響を及ぼさないが,末梢NK細胞の細胞障害能はOKー432により有意に上昇することを明らかにした. 3.口腔粘膜癌生検組織内リンパ球亜群について単クローン抗体を用いて螢光抗体法により観察した. その結果,癌組織にはT細胞浸潤が優越し,正常口腔粘膜に比較してT3^+細胞の割合が多いが,Ia1^+細胞,Leuー7^+或はLeuー11^+細胞は混合感染のない場合には少ない. なお,T細胞浸潤について観察すると,臨床病期が進行するほど,また予後の悪い症例ほどT細胞浸潤の少ないことを示唆する知見を得た. 4.癌細胞表現形質とKillerリンパ球の標的構造との関連性を解析する目的で,ヒト唾液腺癌細胞(HSG)をモデルとして抗体依存細胞媒介細胞傷害作用(ADCC)のシステムを確立した. すなわち,HSG細胞の特異的腫瘍関連抗原と思われる細胞表面に発現しているシアル酸を含まない糖鎖抗原を認識する5Bー10単クローン抗体(IgG_<2α>)を調製した. 5Bー10単クローン抗体の関与したHSG細胞に対する末梢血単核球の細胞傷害活性ならびに5Bー10抗体のHSGヌードマウス腫瘍に対する抗腫瘍効果を検討した結果,ADCCの誘導を認め,この実験系ではADCC活性の発現にKillerリンパ球とマクロファージが関与していた. なお,このADCC活性はIFNーαにより増強した. また,HSG細胞を腹腔内に移植した担癌ヌードマウスに5Bー10抗体を投与すると,有意に生存日数が延長した.
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