研究概要 |
ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)は近年その構造と機能の解明が著しく進展している生体高分子である。われわれは特にシビレエイ電気器官からAChRを調製し、これを用いて構造と機能の相関に関する生化学的研究を行ない以下の新しい知見を得た。1;神経伝達物質の受容体蛋白の糖鎖構造はこれまで全く不明であったがわれわれはAChRの糖鎖構造を世界に先がけて解明することに成功した。すなわちシビレエイのAChRの糖鎖は70%以上がマンノースを8個と9個含むハイマンノース型糖鎖で受容体分子を構成するすべてのサブユニットに含まれていた。各サブユニットに結合している糖鎖の数はそれぞれα,β,γ,δに1,1,2,3と推定され、γとδサブユニットでは上記ハイマンノース型糖鎖の他にコンプレックス型糖鎖も含まれていた。2;コリン性リガンドのAChRとの結合における糖鎖の関与を調べた。その結果αブンガロトキシンとAChRとの結合は高濃度のシアル酸やガングリオシド,卵白アルブミンなどにより阻害された。しかしAChRをシアリダーゼやエンドグリコシダーゼHで処理してもαブンガロトキシンやカルバミルコリンとの結合に変化は見られず糖鎖がリガンドとの結合に直接関与している可能性は小さいことがわかった。3;シビレエイ電気器官中にAChRと類似しているが性質の異なる蛋白が存在していることを見出した。この蛋白はヘビ神経毒やカルバミルコリンとAChRに近いkd値で結合するが界面活性剤を用いなくても緩衝液中に回収されること,中性域で陰イオン交換体に結合しないこと、ConAカラムに吸着しないことなどAChRの性質と異っている。4;AChRの生理機能発現に関与していると考えられている分子量43,000(43k)の蛋白をシビレエイから2種分離した。これらは43k蛋白中の【V_1】および【V_2】と考えられるのでこれらの蛋白の生理機能や分布を詳しく解析するため精製した【V_1】,【V_2】蛋白を抗原としてウサギを用いて抗体を作製中である。
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