研究課題/領域番号 |
61450001
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤沢 令夫 京大, 文学部, 教授 (40025036)
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研究分担者 |
小澤 和道 京都大学, 文学部, 助手 (40178257)
美濃 正 京都大学, 文学部, 助手 (70181964)
山本 耕平 京都大学, 文学部, 助教授 (70025071)
木曽 好能 京都大学, 文学部, 助教授 (40025060)
酒井 修 京都大学, 文学部, 教授 (30026695)
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キーワード | 懐疑 / 真理 / 不可知論 / 蓋然性 / 方法的懐疑 / 実体 / 弁証法 / ニヒリズム |
研究概要 |
西洋哲学史における懐疑論の究明を課題とする本研究の「研究実施計画」に基づき、本年度は懐疑論の歴史的変還を跡づけることによって各時代における懐疑論の特徴を解明することに努めた。古代ギリシアでは後期に懐疑派(o【L!<】 okeΠtlko【L!´】)が現れる。そもそも我々が今日一般に用いている「懐疑」という哲学用語はギリシア語のak【E!´】4LSに由来し、その原義は「孝察」あるいは「観察」である。プラトン、アリストテレスはこの語をその意味で使用している。しかし懐疑派の人々は、ak【E!´】4LSの結果、断定を差し控え、判断を保留して積極的な教説を立てないという態度をとったために、ak【E!´】4LSは彼らによって「懐疑」という特定の意味あいを帯びた用語として使用されだした。この派の哲学はセクストス・エンペイリコス著「ピュロン哲学の概要」に詳しく、そこでは特に判断保留の十箇の方式が挙げられている。教父哲学ではアウグスティヌスが、葢然的認識は真〓の区別を前提とし、従って、真理は予め知られていなければならないと考えることによって新アカデミア派の懐疑論に反対した。アウグスティヌスのこの考え方を継承し、キリスト教の信条、あるいは、真理としての神を前提とする中世哲学ではその学的性格の故に体系的な懐疑論は出現しなかった。中世後期の唯名論が果たして懐疑論と結びつくものであったかどうかに関しては検討の余地があろう。近世ではデカルトが一切のものに対して徹底した懐疑を行なった末に不可疑的な真理の発見に到る。この所謂方法的懐疑を彼は哲学の体系の出発点に位置づけた。ヒュームは感覚的経験の信頼性について等々、合計8箇の問題をめぐって懐疑論を展開する。が、彼の場合、懐疑論は自然主義との関係で検討されるべきであろう。又、懐疑論が倫理的・宗教的領域に適用されることによって生起するニヒリズムの問題も本研究におて更に追究されるべき哲学的課題である。
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