研究の目的は、1983年度の学術振興会派遣研究員としてソ連に長期滞在した際に入手したマイクロフィルムを焼付けて、これからの研究の基礎資料とすることであった。その意味で、今回の研究は十分な成果をあげることができた。マイクロフィルムで入手したものの主要な部分は、セットとしては今でも入手できない、ソ連の1930年代から1950年代初頭へかけての音楽雑誌であった。自分で撮影したフィルムであったので、一部鮮明な焼付けを行うことができず、残念であった。しかし、一万コマを越える大量なフィルムを一気に焼き付けることができたので、豊富な資料を手元に置くことができることになって、研究は大幅に進展した。資料整理の名目で、東京芸術大学大学院生3名をアルバイトに依頼したが、彼らがそれぞれの研究をまとめる上で、この資料が大いに役立ったことは、私としては、当初考えた以上の成果であったと思っている。(1986年度東京芸術大学博士論文、岡田敦子「スクリャービンの和声語法」、1987年度同大学院修士論文・安原雅之「ロシア・アヴァンギャルド音楽研究」、同年度同大学院修士論文・一柳富美子「ムーソルクスキイのオペラ作品研究」)。私自身の研究成果は、次項の「研究発表」に列挙するように、着実に行ってきたつもりでいるが、最終的には、芸術音楽と民族音楽を含めた、ソ連音楽史を完成するまで終わらない。ここでは、今回まとめた関連文献表を主たる研究成果として報告する。
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