本年度は昨年度にひきつづき、再認記憶課題の一つである「遅延対刺激比較課題」とその変型の空間的位置に関する再認課題をサルに訓練し、訓練完成後、海馬より単一ニューロンの活動を記録し分析する実験を行った。主な結果を列挙すると、下記の如くである。 (1)少数ではあるが(N=8)、提示された見本刺激の違い(0か+かという違い)に依存して、遅延期間中に異なった発射活動を示すニューロンが、海馬において見出しされた。 (2)上記の如きニューロンは、空間的な位置に関する遅延比較課題では、遅延期間中には異なった発射パタンを示さなかった。 (3)光刺激に応答を示す海馬ニューロンには、試行の開始を告げる光刺激や見本刺激、比較刺激などには応答せず、サルに選択反応を許す時点で提示される光刺激にのみ選択的に応答するニューロンも12個、見出された。 (4)反応時にGO反応とNO・GO反応で異なった発射パタンを示すニューロンか海馬にあることも明らかになった。 (5)空間的位置に関する遅延比較課題において、刺激提示の位置の違いに依存して異なった活動を示すニューロンが、海馬で多数見出された。 (6)空間課題・非空間課題のいずれの場合にも、誤反応後にのみ特異的に発射活動の変化(上昇・低下)するニューロンが、海馬においても見出された。 以上のごとく、ニューロンレベルの研究においても海馬が再認記録に関与していることを示唆する知見が得られた。
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