研究課題/領域番号 |
61450015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下河内 稔 阪大, 人間科学部, 教授 (60029999)
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研究分担者 |
志村 剛 大阪大学, 人間科学部, 助手 (80150332)
投石 保広 大阪大学, 人間科学部, 助手 (00093443)
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キーワード | 事象関連電位 / 誘発電位 / P300 / 弁別学習 |
研究概要 |
本年度では主として、人間の認知活動に関連して出現するP300成分がラットにおいても観察できるかどうかを検討した。61年度の本補助金でラット用スキナー箱を2台購入し、それらに既存の制御装置を接続して、16匹のラットにオペラント条件づけを施した。更に、4000Hzの純音を【S^+】、1500Hzの純音を【S^-】とした弁別条件を導入し、この課題を十分に遂行できた段階で、それらのラットにERP測定のための皮質及び深部電極を外科的に装着した。そして、再訓練の後、それらの電極から脳波を記録し、コンピュータで加算平均処理して事象関連電位(ERP)を求めた。その結果6匹のラットにおいて、主に大脳皮質と海馬からERPが導出でき、そのERPについて以下のような結果を得た。1.【S^+】によって引出されたERPには2.に述べるような種々の成分が認められたが、【S^-】によって引出されたERPにはそのような成分はほとんど認められなかった。2.大脳皮質の記録ではP100とN200及び400msec以降の緩やかな陽性電位、海馬の記録ではN100、P150、P250と400-600msecの間の緩やかな陰性電位が主な成分であった。 3.大脳皮質内に刺入した双極電極の場合、その深い方の電極からより高振幅のERPを導出できた。4.【S^+】の提示確率を変化させても振幅の変化はなかった。 5.消去を行うとこれらの成分は消失した。 6.【S^+】のみの全強化にするとERPの振幅が減少した。以上の結果から、【S^+】提示後400msec以降に出現し、大脳皮質で陽性、海馬で陰性として記録される電位を人間のP300に類似するERP成分の候補とすることができ、またこの位相の逆転減少から、その発生部位を皮質深層あるいは背側海馬と推定した。しかし、この電位が本当にP300類似のものであるかという問題に関しては、1.と5.と6.の事実からは支持されるが、4.の事実はP300の属性と相反するものであり、この点について更に吟味する必要があった。
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