研究概要 |
本年度は以下の如き知見を得た。 1.行動実験:第1実験として原型三角形と変形三角形の単一利激訓練を行い、訓練後般化勾配を検討した。その結果、単一刺激訓練では視覚パターンの変形を次元とする刺激統制が形成されない事がわかった。次に、第2実験としてランダムドットを【S^-】,原型又は変形三角を【S^+】とする弁別訓練を行い、弁別後般化勾配を検討した。いずれの場合も【S^+】の位置に頂点のある般化勾配が得られ、変形三角から原型三角を抽出する所謂原型学習は認められなかった。第3実験として【S^-】がランダムドット,【S^+】が水平に並んだドットに変形をかけたパターン,及び【S^-】が四角,【S^+】が変形三角の弁別訓練を行った。いずれの場合にも、【S^+】に反応の頂点がある般化勾配が得られ、原型学習の事実は認められなかった。以上の知見にもとづき,現在はドットではなく線で描かれたパターンによる実験を継続中である。 2.破壊実験:本年度は複雑な刺激パターンではなく、線刺激の弁別に対する視覚中継核破壊の効果を検討した。部位としては視床DLL,N.Rotundus(Rt)及び視交又上交連を選んだ。その結果,1),DLL破壊は視覚弁別に効果を持たない事,2),Rt破壊は視覚弁別に障害をもたらすが一側性Rt破壊後に対側単眼による単眼弁別学習が可能な事,及び3),2)の様な場合には明白な両眼間転移が認められる事,がわかった。 3.誘発電位:本年度は主としてDLL及びRtからの尊出を行い、大脳視覚中枢からの尊出は行わなかった。又、刺激も複雑なパターンではなく、閃光を用いた。その結果,0.6Jの刺激強度に対しRtで30MV程度の誘発電位が見られた。又,一側性入力にした場合には同側Rtでの電位は数msecの遅延を示した。現在,この遅延が視覚情報の脳内再交又によるものであるか否かを検討している。
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