研究概要 |
本研究の為に四つの実験を行なった. 最初の二実験では単純な刺激を用いてハトの視覚パターン弁別の両半球間転移における視蓋経由系の役割を明確にし, 円形核を破壊した場合の記憶障害と感覚障害の区別を行なった. 即ち, 非訓練側の円形核破壊は転移時に感覚性の障害をおこし, 結果として転移が障害される. 一方, 訓練側での破壊は, それが訓練前に行われていれば障害をもたらさず, 訓練後の場合は障害をもたらす. 前者は同側性の視覚系による弁別の形成を示し, 後者は記憶障害を示す. 第三実験はハトにおける原型学習の可能性を吟味したもので, 点で構成された三角形とランダム・ドットの弁別を用いて, 弁別後に変形を受けた三角形に対する般化をテストした. その結果, 変形の程度が般化の次元として機能すること, およびハトが変形された三角形からその原型を抽象することが出来ないことが分かった. 同様の結果は三角形と四角形の弁別でも, 水平に配列された点とランダム・ドットの弁別でも認められた. 第四実験は複雑な視覚概念の脳内機構を検討したもので, 視蓋経由の視覚系の最終部位である外線条体損傷が無作為に配置されたる本の線分と任意の3点を結ぶ三角形の弁別に障害を与えることが分かった. なお, 統制群として新線条体の破壊を行なった群では障害は全く見られなかった. このことは第1, 第2実験とも一致するが, 全体的な結論を得る為には, より多くの部位での検討が必要であり, 外線条体内での構造の細かい機能分化も試みる必要がある. 総括的には, 行動実験と破壊実験ではかなりの成果が得られたが, 電気生理学的な実験については充分なデータを蓄積するに至らなかった.
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