研究概要 |
6夜連続の睡眠ポリグラフの記録をおこない, 睡眠中の目覚めに対する自覚反応を被験者からのボタン押し反応(SA)によって検出し, 睡眠段階, 睡眠経過および体動, α活動の出現様との関連から睡眠中の自発的目覚を中心として, ヒトの終夜睡眠構造を分析した. その結果は次のようにまとめることができる. 1)各睡眠段階におけるSA出現頻度は, 段階REMと段階2で高かった. 2)睡眠経過に伴うSA出現頻度は, 睡眠初期で最も低く, 時刻への依存性は認められなかった. また出現頻度は睡眠周期第3周期で最も高く, 周期間に有意な差が認められた. 3)段階REMにおけるSAの42.4%がその時点で他の段階に移行した. SAの出現潜時は段階REMでは9〜27分区間での頻度が高く, 段階2では0〜18分区間と36〜45分区間での頻度が高かった. 段階に2について1つ前の睡眠段階別にSA出現潜時をみると, 1つ前の段階が段階REMの場合は, 0〜18分区間と36〜45分区間での頻度が高く, 段階4, 3, 1の場合は0〜9分区間での出現は認められなかった. 4)SAの出現頻度は女子に比べ男子の方が高い傾向が認められた. 5)翌朝の自発覚醒についての主観的評価で, ボタン押し反応数は, ポリグラフ記録上の客観的評価で認められたSA数に比べ, 過大評価された. 以上の結果から, 睡眠中の自発的目覚は睡眠段階REMと段階2でおこりやすく, 特に段階REMと密接な関係があると考えられる. また, 自発的目覚の時間的出現位置は, 睡眠経過に伴う睡眠の質的変化によって規定されると推察され, 睡眠周期第3周期で自発的目覚めがおこりやすいと結論できる. 自発的目覚の個人差として, 目覚め直前の睡眠段階で決定される個人の「目覚めのスタイル」の存在が示唆されたのは非常に興味深く, 今後の研究がこのような個人差を中心に展開されることが望まれる.
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