研究概要 |
本年度においては、Dual Channel FFT Analyzer(B&K 31)プログラマブル ディジタル フィルタ(PDF1024),音声波形編集装置(DANAC7000)及びディジタル ソナグラフ(KAY7800)を、コンピュータ(HP216)で制御するシステム化を完成させた。これらのシステムを用いて、健聴成人及び聴覚障害者の自然音声を、音節単位と単語及び句のレベルで任意に切りだし、それらの音響的特徴の解析、抽出、格納を行った。聴覚障害者の音声サンプルの特徴に関しては、日本特、教育学会(5編)、日本教育心理学会(1編)で発表を行った。原著論文として著した「聴覚障害者の発語に関する音響音声学的特徴(心身障害学研究)」、「聴覚障害者の発声・発語 ついてーVCV音節の持続時間を中心にー(電子通信学会)」では、次のことを明らかにした。 (1)重度聴覚障害者の母音調音にみられる平均基本周波数は、健聴者よりも高いことが認められるが、聴力レベルを必ずしも一義的関係を有しない。高度・重度聴覚障害者の基本周波数は、5母音間で異なる。 (2)日本語破裂音を母音ではさむVCV音節の発語にみられる時間構造は、【V_1】D,CD,VO【T_1】【V_2】Dのセグメントからなっている。このVCV音節の発語において、聴力レベルが100dB以上で、聴覚的フィードパックの確立が不十分な重度聴覚障害者にあっては、日本語の音韻規則を獲得し、調音プログラムを持ち得ていても、CDが短く、【V_2】Dが著しく長くなることが認められた。 (3)重度聴覚障害者の慣用句の自然発語にみられる持続時間は、健聴者の2倍強も遷延されている。重度聴覚障害者の場合、慣用句に対する発語運動プログラムを持ち得ていても、調音結合の適切さと調音運動の平滑化において、著しい困難性を示していた。
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