聴覚障害児の発音を改善するため、発声時の呼気調節を調べて、発音の指導方法を検討する目的で研究が進められている。第一の課題は発声時の呼気使用を量的に調べることであり、発声機能検査装置による検査結果から、聴覚障害児の発声では、必要以上に呼気を使って発声することと呼気を一定の量に保つのが困難なことが明らかになった。また、鼻音以外で鼻から呼気が漏れる開鼻声が確認され、鼻咽腔閉鎖機能不全が疑われたが、これは測定できなかった。従って、口腔と鼻腔からの呼気の割合を調べる必要が生じた。61年春に、研究目的にふさわしい測定機が発売された(KEY社製のNASOMETER)これを購入し、主に入力部と記録部の改良および検査法の検討を行って、測定と分析を実施している。 検査対象児の選定とその聴力損失や言語力などの調査および発音についての予備実検を実施した。被検者の数は、日程調整がつかないこともあって、計画よりやや少なくなった。しかし、62年度に他の学校を加えて実験を実施する予定であり、研究の目的は充分達成されるものと考えている。 第二の課題は、これらの研究資料を基に、発音指導法を改善することであるが、検査に使用した装置はいずれも呼気使用状況が量的に表示できるので、訓練機として利用度の高いものであることが明らかになった。本機を使って発音矯正をするためのソフトウェアーを開発するのに着手している。 一方、発声時の筋運動の様相を検討する必要があると考え、筋電図などによる計測を準備している。この点は研究的にも未解決な部分が多く、即座に訓練法を云々することはできないが、重要な側面であり研究を継続したい。追加実験の結果を加えて、62年度に、発音指導のうちの呼吸訓練を中心にした指導法を検討して、報告書を作成する予定である。
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