研究概要 |
現代アメリカ教育改革実施過程に関する資料をアメリカから直接に収集し、また関係文献を渉猟し、研究を行った結果、初年度の段階では次のような状況が明らかになった。 1 連邦段階(または全米的段階)では、1982年以降現在に至るまで多数の教育改革案が提案されている。提案主体は、連邦教育省付設の審議会をはじめ、全州協議会,財団,学者グループなど多様である。提案の領域は、(1)学校組織と学校経営,(2)カリキュラム,(3)生徒と学習,(4)教育の質と量,(5)教員と教授,(6)中学後教育,(7)地方の役割,(8)州の役割,(9)連邦の役割,(10)実業界・産業界の役割、など広い範囲にわたっている。 2 アメリカの場合、教育改革の実施主体は連邦でなく、州であり、地方である。州段階では、早くも1984年3月までに全州に教育改革特別委員会が設置され、その後徐々に中間報告が出され、1986年現在で本報告にもとづき法律が制定され、改革が実施に移されている州も少なくない。教育改革における州の関心事を整理すると、(1)ハイ・スクールの教育水準の引き上げ、(2)教員養成制度,教員資格,待遇等の改善、(3)理科,数学,コンピューター科学担当教員の不足の解消、(4)「マスター教員」または「リード教員」の設置と活用、(5)学校での1日の授業時数,1年の授業日数の増加、などが主なものであるが、各州ではそれぞれの伝統や現状のなかで、上記事項の1つまたは複数の改革に取り組みつつある。 3 地方段階では、州段階で作成される基準に拘束されるかたちで改革が行われることが多いが、地方学区の自治が強く認められている州では、とりわけカリキュラム改革において地方の独自性が見られる。 4 現代の教育改革は、かつての「スプートニク・ショック」によるそれと異なり、全面的基礎的改革である。
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