本年度は、3年間交付を受けた本研究課題の最終年度にあたるので、基本的には研究の総括のための作業を進めた。それはほぼ以下の通りである。 1.61年度、62年度に実施した、主として滋賀県内の村落についての収集資料を整理、検討した。そして、各人はそれぞれの研究分担課題に応じて、調査結果の分析をおこなった。 2.その分析過程で、それぞれの最終的な研究課題を確定し、それについて研究成果を論文としてとりまとめることにした。すなわち、福田は近畿地方村落の民俗的特質そのものについての総合的な枠組を組み立てることとし、竹本は個別村落調査で得た近畿地方村落の特質の一つと考えられる宮座とそこにおける儀礼について集中的に分析を加えることとした。 3.その分析および論文の執筆過程で生じた疑問点、問題点を確認するために、過去2年間に実施した村落を対象に短期的な現地調査を実施した。特に竹本は滋賀県伊香郡余呉町下丹生について2回にわたり確認調査をおこなった。 4.その結果、福田は近畿地方村落の民俗的特質を「衆」組織の存在と理解した。そして、その特質を集落形態や村落の種々の社会関係との関連で統一的に把握し、村落を強調する社会としての近畿地方村落を象徴する用語であるとした。一方、竹本は近畿地方に豊かに伝承されている宮座祭祀に注目し、そこにおける供物について各地の資料に基づき分析をおこなった。そして、食物が宮座祭祀のなかで象徴的な意味をもつことを明らかにし、これまた近畿地方村落の特質であるとした。 5.以上の結果を「研究成果報告書」として取りまとめ、印刷刊行した。
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