研究概要 |
頭書予定していた研究期間が一年短縮されたことに伴ない, また, 有珠・善光寺が所蔵文書の独自調査を開始したことにより, 研究内容に若干の変更が生じた. それは善光寺文書の調査を後日に見送ったことであるが, その分厚岸・国泰寺, 様似・等樹院の調査に意を注いだ. 調査は文書の全てを対象としたが, 等樹院においては予想どおり散佚が著しかった. 内容は報告書に譲るが, 本調査の第一の成果はアイヌを檀徒として扱っていたことなど, アイヌと仏教寺院との関係が明らかになってきたことであろう. 成果の第二は出稼・在住の日本人との関り方である. 近世において最も遅く建立されたこれら寺院が, 辺境に生活する底辺の労働者たちにとって大きな拠りどころとなっていた. これら文書は, また, 東蝦夷地の近世史研究においても第一級の史料であることは疑いない. 現在は尨大な量の文書の整理が主で細かい分析には至らないが, とりあえず, 全史料を翻刻公刊する予定であり, その際は出版助成をおねがいするつもりである. なお, 今回の調査の成果はフロッピィ・ディスクに蓄積しつつあり, 他研究者には, フロッピィにより成果を提供する.
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