研究課題
本年度は昭和六一年度より続けてきた共同研究の最終年にあたる。最終年度として本研究の総括を行うとともに、初年次・二年次に引き続き寺院所蔵資料目録の調査・収集・作成にあたった。先ず、当初の目的である調査対象寺院台帳の作成は、ほぼ初年度に計画したが全国の主要な寺院に関する日本文学関係資料の所在に関する目録の作成が完了した。この所在目録について研究成果報告書に詳細は報告してある。次に寺院関係所蔵目録の調査・収集は、今年度新たに刊行された『東大寺文書目録』等を購入し、当館の予備調査によって、旡為信寺・善通寺・志度寺・知恩寺等の蔵書目録を撮影収集することが出来た。各寺院に於ける日本文学関係資料の所蔵把握としては、調査対象を西日本地区に重点を移し調査を行った。調査を実施できた寺院は、専光寺・大乗寺・豪摂寺・華厳寺・横蔵寺(以上中部地区)、竜泉寺・浄厳院・妙法院・元興寺極楽坊・西教寺(以上関西地区)、安住院・福王寺・一乗寺・妙覚寺・善通寺・志度寺(以上中・四国地区)であり、貴重な資料の発見があり、国文学研究資料館による本格的調査へ向けての、各寺院当局の理解がある協力の約束を得ることが出来た。以上、三年間の共同研究をもとに、本格的調査の着実な成果をあげることが出来た。今後は、国自治体の教育委員会の調査や、各宗派で行われている宗典編纂事業などとも緊密な連絡をとり会って日本文学関係資料の所在の確認を継続して行きたい。三年間の調査によって、貴重な文化財への無関心や保存管理の不備に改めて危機感を深めることになった。寺院側の非公開主義や秘密主義の壁を破り、総合的な文化財調査を進めることが緊急に必要であると痛感する。