研究概要 |
本年度の研究実施計画中、(2)の公正取引委員会の独禁法のenforcement policyの実証的検討の前提としてのデータ・ベースの作成については、OASYS Mateを用いて、公正取引委員会の審決集、年次報告を、データ・ベース化することの試みを行った。入力情報は、審決の種類(同意審決etc)当事者,当事者の業種,課徴金の額,審決年次などであり、それらのそれぞれをキー・ワードとして用いることができる。このようなデータ・ベース化を通して明らかとなった問題点は、1.当事者が非常に多数の場合どう処理するのか、2.研究目的との関連で業種をどのように分類するのが適切か、3.課徴金額を、それが課せられた企業への影響という観点からどういう風にインデックス化するかである。 さらに、研究実施計画(2)に属する法執行の生産性・効率性研究については、その理論的な枠組として、アメリカにおける刑事司法の生産性・効率性研究の理論枠組を、応用できることが明らかになった。問題は、操作化・測定のレベルにある。公正取引委員会を一つの投入,産出系として捉える時、投入として、予算とスタッフ数等を用いることができるが(この点で本年度の研究実施計画(3)の「公取の予算,組織,審決手続に用する人員・日時」の検討が大変有益であった)、産出としては、刑事司法のように、犯罪率,逮捕率のようなインデックスは存在しない。従って、産出を測定するなんらかのインデックスを開発する必要があるがそれとの関係では(4)の「独禁法違反の制裁措置が企業に対して与える影響・実効性」の研究が重要である。そこでは株価変化に対する警告・排除措置etcの影響と他の要因を識別する方法を見い出すこと、および、非上場会社について、株価に代るインデックスを見い出すことが必要であることが明らかとなった。
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