研究概要 |
本研究の目的は,高エネルギー核反応がおきたことの直接の証拠となるガンマ線, 中性子の発生が観測された太陽フレアで加速された粒子中の重元素組成の特徴を探り, フレアでの高エネルギー現象を研究することにある. 観測データはISEE-3に搭載されたシカゴ大学のMEH宇宙線検出器によるもので, 観測期間は1978年から1982年の4年間にわたっている. 解析方法は, ツンチレータCI(D4)をEカウンター, 2つのSi半導体検出器(D1, D3)を△Eカウンターとして用いた△E-E法による. このためにはまず検出器の検定, 即ち各検出器のパルス波高をエネルギーに変換する換算係数の決定が必要となる. 本研究では検出器系の新しいエネルギー較正法, 即ち, 同程度の大きさの宇宙線検出器には無く, MEHが備えた最大の特徴であるチェレンコフ閾値〜5と〜1.58の2つのチェレンコフカウンターにより,inflightのデータから複数のminimum ionizing heavy ion(MIHI)を選び, これらのMIHIがD1, D3中で失うエネルギーの計算値と実際のパルス波高との比較からD1, D3を検定し, 次にD1-D4, D3-D4平面上の各重元素のトラックを使い, 非線型な応答特性を示すD4の検定と行うという新方法を開発し, その有効正を実証した. この新方法により△E-E法の解析に必要なすべての検出器の較正は矛盾なく完了した. この方法をπ°崩壊によるγ線と中性子の生成, 異常に硬い陽子のエネルギースペクトルが観測されている1982June3の太陽フレアからのHeに適用し, そのエネルギースペクトルが陽子の場合と同様に硬く, 少くとも〜50MeV/nまでのHeが加速されていることを確認した. 今後はひきつづき, このフレアを重点対象として, 核反応生成物としてのLi, Be, B等の軽元素, 及びFe以下の他の重元素の存在度とスペクトルを解析する予定である.
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