研究概要 |
昨年度, デジタルオシロスコープを購入し, 測定器からのデジタル信号を長い範囲にわたって連続的に, 計算機に記憶させ, その性質をみた. 本年度は, その蓄えられた信号に高速論理処理を施し, 本研究の目的である, 連続信号からの事象判別を試みた. 当初, この判別を, 小型計算機へ信号を高速転送し, そこで行うことを計画していたが, 本年度にはいり, 実用的な高速高性能の並列処理CPU(中央演算処理装置)IC(集積回路)が市場に出回るようになり, 我々も, これらをもとに回路を一部自作し, 信号処理を行うこととした. 並列処理用CPUーICを用いることにしたことにより, 個々の処理能力は極端に高速である必要はなくなった反面, 従来の論理処理と異なる方法を開発する必要が生じ, また, 並列処理に付随するCPU間の通信に対するテストも必要となった. これらはいずれも本年度内に開発テストされ, 従来の小型計算機で処理する程度, 若しくはそれ以上の性能を得ることができた. また, 論理処理にCPUを用いたことにより, この課題で述べているタイムプロジェクションチェンバーの信号のみならず, 一般的に測定器, 若しくは測定器系の信号処理に使用することが可能で, 連続的に信号を捉え, そのなかから必要のある信号パターンのみを選び出して記録する全ての分野で応用可能であると考えられる. 本研究は, 現在まとめの段階に入っているが, 実際的な応用として, 高エネルギー物理学研究所の陽子シンクロトロンの実験, また東京大学宇宙線研究所との共同研究, 超新星からの高エネルギーγ線の観測に用いることを計画中である.
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