研究概要 |
1.新方式による二光子直接吸収観測装置の開発。(1)パンプ光として用いるCWモード同期Nd-YAGレーザー(1.06μm)とプローブ光に用いるYAGレーザー同期励起色素レーザー(波長可変)を独自に製作し共に十分な出力とピコ秒パルス幅を得ることができた。高感度変調分光測定には双方のレーザーの高安定化が最も重要であることに鑑みて、レーザー媒質等の温度制御,変調周波数の7桁以上の安定化,更にはフィードバック制御等々の努力により,たとえばYAGレーザーで出力変動0.3%以下の高安定化に成功した。(2)光音響変調器によりパンプ光を高周波振幅変調し(〜3MHz),高周波ロックイン検出器を用いてプローブ光の変化量(吸収量)を少なくとも【10^(-4)】まで観測できることがわかった。(3)現在、アンセラセン結晶を用いてこの新しい観測系の基礎特性を調べると共に、並行してポリジアセチレン結晶の二光子吸収スペクトルの測定を行なっている。2.ポリジアセチレン単結晶の育成と基礎物性測定。(1)A型の代表であるPTS,B型のFBS,TCDUの単結晶を育成し物性測定に用いている。(2)励起子発光の有無とその結晶の良否との相関の有無が電子励起状態との関連で問題となっている。その解明のためにQスイッチNd-YAGレーザーおよびその第二高調波光をそれぞれ用いて二光子および一光子励起発光スペクトルの測定と比較をPTS結晶で行なった。その結果、一光子励起発光スペクトルは主に表面に起因するものであり、バルク効果のものはもっと長波長側に存在すること、発光効率は非常に小さいことなどの知見を得た。(3)上記の第二高調波光の励起により赤外活性格子振動による共鳴ハイパーラマンスペクトルが観測できることを明らかにした。ポリジアセチレン結晶の骨格振動の赤外モードは赤外分光法で観測できないため、この知見を得るのに貴重なデータである。詳しく調べている。
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