研究概要 |
昨年度末(本年2月)に検収が終った中性子散乱用稀釈冷凍器を運転し実験を開始した。先の現地組立てで一部不備(冷凍ユニフト)が発見されOXFORD社の技師が持ち帰り夏休み前に再度取り付けされた。修理が完了し全ての部品が確実に作動する事を確認し我々研究者が運転する態勢を整えて来た。勿論覚悟をしていたが常時10milli Kに到達するのに大変な時間を費やした。この原因は放射線作業区域である完全に外界と遮断された原子炉内作業であることや液化ヘリウムを商社から2500円/lで購入し乍ら実験するという資力,労力の為であるが、もしこの科研費の補助がなければここ迄到達し得なかったと考える。現在常時試料をloadした状態で10milli Kを常に得ている。年度末の中性子照射テスト後、4月以后本実験を行なう計画で準備が整っている。 一方この課題で第一の目的にしているCe【Cu_6】,CeLa【Cu_6】,La【Cu_6】の大きな単結晶を手に入れ、各々の結晶の特性を調べて中性子磁気散乱をやるのに充分な高純度試料であることを確認している。その為の準備として低温で行なった実験結果のいくつかを列挙しておく。Ce【Cu_6】の近藤格子をつくるf電子スピンが反強磁性的に相互作用すること(参考論文1)は始めて我々が見つけたが、その反強磁性相関が温度を上げていくと2K附近で消失して孤立していくことがわかった。又約200Kで結晶構造が変化し相転移を起すがこれがCeのf電子の電子状態と全く無関係であること(参考論文2)及びその転移が電子格子相互作用(ヤーンテラー相互作用)を示唆するが、相転移として新らしい側面をもつことをみつけた。これらの結果について目下論文を作製中である。
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