研究課題/領域番号 |
61460028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 俊一 東京大学, 理学部, 文部教官教授 (90029471)
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研究分担者 |
小森 文夫 東京大学, 理学部, 文部教官助手 (60170388)
大塚 洋一 東京大学, 低温センター, 文部教官助教授 (50126009)
池畑 誠一郎 東京大学, 理学部, 文部教官助教授 (30107685)
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キーワード | アンダーソン転移 / 金属絶縁体転移 / 臨界指数 |
研究概要 |
金属中のポテンシャルの乱れが大きくなることによって電子の波動関数が局在し絶縁体に移転する、いわゆるアンダーソン転移の実験的研究は古くから行われてきたが、1979年に発表されたスケーリング理論以来、全く新しい視点にたつ研究が、主として局在が弱い領域で活発に行われほとんど完全な理解が得られるに至っている。本研究は、実験の対象をより局在が強い領域に移し、絶縁体への転移の前後を詳細に調べようとするものである。 本年度は三年目の最終年度どにあたる。予定通りGeSbの金属絶縁体転移における帯磁率を稀釈冷却機温度域SQUIDを使って測定し、定性的にはSi:P系と同じであることを確認した。特に、絶縁体相を詳しく調べ、不純物間の磁気的相互作用についての知見を得た。ESRによる帯磁率の測定は、補償されたSi:Pにまで拡張し、現在続行中である。 昨年度より開始した、永続光伝導現象を利用したAlGaAs系の金属絶縁体転移の研究は大きな成果をあげることができた。極めて細かく電子濃度を掃引できるというこの系の特徴を生かして金属絶縁体転移近傍での電気伝導度と誘電率を精密に測定し、前者の臨界指数が1であり、後者のそれが2であることを示した。濃度軸上の測定点の密度は、これまで最も高いとされていたSi:Pでの圧力による濃度掃引の場合を上まわるものであり、常に問題にされる、どこまで転移に肉迫したかという疑問を払拭するものである。 最終年度として、これまでの実験結果を金属絶縁体転移のスケーリング理論を用いて解析し、理論と実験の一致、不一致を明らかにした。残念ながら不一致はかなり多く、現時点の理論を全面的に指示する状況には至っていない。最近ではスケーリング理論そのものの妥当性に疑問が提出されるなど、理論の側にも多くの問題が残っている。
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