研究概要 |
前年度に引き続き, 良質準結晶合金の探索・作成とそれらの物性測定を行なった. 1.良質準結晶作成は, AlーMnーTmーSi(Tnは遷移金属)4元系の内, 特にX線ピークの半値巾が小さく, 熱的安定性も高いAlーMnーRuーSi系について, Mn濃度を20%に固定してRu,Siの濃度を変化させて良質の準結晶形成の組成範囲を決定した. また, 遷移金属を含まない系として, AlーMgーZn3元系について単相の準結晶の得られる組成範囲を決定した. また, 安定相として存在することが報告されているAlーLiーCu合金系について, 析出法によって単準結晶を作成することを試み, サブ組織を含み質的には必ずしも良くないが, 数mmのグレインの準結晶を得ることに成功した. 2.物性測定は, 上で得られた単想の準結晶について, 前年度に引き続き, (1)電気抵抗の温度依存性(2)磁気抵抗効果(3)帯磁率の測定を行なった. 特に, AlーMn系準結晶については, 低温での急激な抵抗上昇に着目し, この抵抗異常と準結晶の完全度, 局在磁気モーメントの大きさ, 合金組成との関連について考察した. Mnのもつ局在磁気モーメントの大きさは, Mnの一部を他の遷移金属と置換することによって顕著に変化し, 抵抗異常は局在モーメントの大きさと密接に関係していることが判明した. また, モーメントの大きさが同程度の場合は抵抗異常が準結晶の質の向上と共に顕著になる傾向を示した. 磁気抵抗効果は抵抗がlog T依存を示す温度域で正で, 抵抗上昇が近藤効果によるとする解釈を困難にしており, 準周期構造に伴う電子の特殊な局在状態に基因する可能性が考えられる. 同一組成でアモルファスと準結晶の両方が得られるAlーMnーSi系の電気抵抗も磁性との関連が見られた. MgーAlーZnやAlーLiーCuの単純金属の準結晶の電気抵抗の系統的研究は今後の課題である.
|