研究概要 |
大きな電子比熱γと有効質量をもつ"重いフェルミ粒子系化合物"の電子状態、特に、その動的挙動をESRを用いて研究するのが本研究の目的である。本年度は、その実施計画に基き実験装置の整備、試料作成と測定の一部を行ったので以下にその概要を述べる。 1.ESR装置の整備。1K以下【^3He】温度領域でESR測定可能なクライオスタットを設計製作した。使用導波管はWRJ-320であるため、空洞共振器を交換することによって、25GHz以上の周波数帯での測定ができる。この完成によって常用最底0.4KまでのESR測定が可能となった。これと、今回、新設したESR分光器と高安定直流電源を使用し、ESR測定の感度調整を行った。この際、テスト試料として希薄合金AgMnを使用しそのESR信号の検出が可能となった。 2.測定試料の準備。今年度は(1)Ce(【Sn_(1-X)】【In_X】):Gd,(2)Ce【Cu_6】:Gdを準備した。Gdの濃度は〜1000ppm程度とした。このうち、Ce【Cu_6】は小松原教授(筑波大学物質工学)の提供によった。(1)のCe【Sn_3】系はアーク溶解炉とシリコニット炉によって作成した。これらの試料は本年度新設の試料加工機により約3×3×0.2mmの寸法のESR測定試料として切り出された。 3.測定と結果。Ce【Sn_3】:Gdについては極低温(約5K以下)でGdのESR信号が検出され、線巾は温度に比例して増加し、その比例係数は14.3Oe/Kである。共鳴位置から求められたg値はg=2.015±0.002である。一方、Ce【Cu_6】:GdについてはGdのESR信号が検出できなかった。これは、Ceの磁気モーメントの局在性が良く、近藤効果を示すものは、スピン揺動効果が大きく、Gdのスピン・ライフタイムを短くするためと考えられる。
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