| 研究概要 |
外部磁場をかけると超伝導が出現する現象を磁場誘起超伝導と呼ぶ。この現象は、機構は異なるが磁性超伝導体と重いフェルミ粒子系において出現することが、理論的に予測された。前者については、以前我々とスイスのジュネーブのグループによって確認された。しかし後者に関してはまだ明確な結論が得られていない。我々は、本年度、1.磁性超伝導体における磁場誘起超伝導の出現機構を重点的に調べること。2.希土類元素を含む重いフェルミ粒子系を探索し、磁場誘起超伝導の可能性をさぐることを研究目的とした。
1.Euを含むシェブレル相化合物を作製し、金研超電導材料開発施設に設置された希釈冷凍機及びハイブリッドマグネットを利用して、それぞれ50mK,12テスラ,0.5K,23テスラまでの温度及び磁場領域で電気抵抗を測定した。その結果、適当な濃度の試料において、磁場誘起超伝導を観測した。さらに、この現象を示す試料では、中間磁場領域(1〜10テスラ)で抵抗にヒステリシスが現われることを見出した。この系の磁場誘起超伝導は、超伝導を担うd電子と磁性イオンのf電子との相互作用が負であるために、低い外部磁場をかけたとき、d電子の感じる有効磁場は逆向きに作用する(ジャッカリーノ・ピーター効果)結果と考えられている。我々の観測したヒステリシスは明らかに、通常のヒステリシスとは逆で、この試料において負の有効磁場が働いていることを明確にした。
2.Ce【Pd_2】【Ge_2】,Ce【Ru_2】【Ge_2】,La【Pd_2】【Ge_2】,Yb【Pd_2】【Ge_2】等,Th【Cr_2】【Si_2】型の試料を作制した。前2者は、約10Kで反強磁性と思われる磁気転移を示し、さらにCe【Pd_2】【Ge_2】は重いフェルミ粒子系の可能性があることを見出した。後2者は約1Kで超伝導になるが通常のWHH理論で理解できそうである。研究は現在進行中であるが、一部は来年度中に学会誌等に発表する予定である。
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