研究概要 |
高い近藤温度をもつ高濃度近藤物質CeNiとそのLa希釈混合物をとりあげ, それらの単結晶による磁気的電気的および熱的測定を通して, 希薄近藤系から高い近藤温度をもつ高濃度近藤系への連続的変化を実験的に明らかにした. CeNiは, 従来, 価数揺動物質といわれていたが, 近藤温度の高い高濃度近藤物質の一つであると見なされることが示された. …近藤温度は, Ce濃度の増加にともない, 約4Kから100Kまで連続的に増加することが明らかになった. SmCu_2は価数揺動物質ではないかとの予測から, 純良単結晶による電気抵抗, 帯磁率および比率等の総合的実験を進め, (1)23Kにネール温度をもち, (2)b軸方向にモーメントがそろった反強磁性体であることが推論され, 磁性の担い手は3価のSmイオンであることが明らかとなった. ただ, T_N以下のエントロピーが小さいことから, 低温領域における混合原子価の可能性はまだ否定できない. 本研究の大きな柱の一つが, 高濃度近藤物質および価数揺動物質の純良単結晶の作製である. 今回, 単結晶引き上げ炉が新たに導入され, 炉内雰囲気ルツボ, 断熱料, 真空度, 等の改良・吟味の結果, 1100゜C以下の融点のもので蒸気圧のあまり高くない物質は引き上げが可能になり, 純良な単結晶が作製されるようになった. すでに引き上げられた単結晶は, LaNi, CeNi, SmCu_2, LaInCu_2, SmInCu_2等である. このうち前2点については超高真空固相電解法により試料の純良化が行われ, 残留抵抗値において純良化に成功した. 高純良化された試料のドハースファンアルフェン効果等の実験は今後の課題となる. また, CeやSmを含む3元系の高濃度近藤物質および価数揺動物質の純良単結晶がすでに引き上げられ, これらの総合的研究も今後の課題となる.
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