研究概要 |
イオン結晶中のF中心の光励起状態における電子・格子強結合によって生ずる緩和のダイナミクスを明らかにする目的で、F中心の共鳴2次発光(RSE)の測定を行った。ことにRSEは、共鳴ラマン散乱(RRS),ホットルミネセンス(HL),通常螢光(OL)の順で測定される。具体的には、F中心の共鳴光の偏光方向に関して並行及び垂直方向のHL成分(【I_(11)】と【I-1】)を、共鳴光進行方向に対し90°の方向でとり出して測定し、偏光相関分極度Pとして、(【I_(11)】-【I-1】)/(【I_(11)】+【I-1】)を決定し、之等をStokes波数△Ω(三【Ω_0】-Ω;Ωは測定波数、【Ω_0】は共鳴波数)に対してプロットした。その結果(1)HLは△Ωとともに急激に減少する。(2)Pはラマン領域で約50%に減少した後、可成り広い△Ωの範囲で一定値(プラトー)を保ち、OLの直前で消滅する事などを確かめた。之等の事情は、共鳴励起後、RRS過程ののちEg-モードフォノンで縮退がとけた断熱ポテンシャルの一つの谷を、F電子が、主として【A_(1g)】-モードフォノンと結合しながら格子緩和し、特に(2S-2P)準位交差付近でダイナミカルな緩和をおこしてPを消滅させるものとして理解される。(萱沼は量子論的な解明を準備中である。)このスキームを用いて、既に測定済みのF中心の光吸収帯と、今回我々が【10_4】の桁にわたって精密に決定したOLの帯形状を矛盾なく説明するを試みた。その結果、電子・格子の2次相互作用の導入を必要とすることの提唱を行った。また、断熱ポテンシャルの底からのはねかえり電子の反転点より生ずるHLも測定し得た。この研究は、次年度は、2光子励起の際のRSE測定に向けて推進予定中でる。 その他、磁場印加中での緩和過程で生ずるスピンメモリー損失過程についての考察を行なうと共に、エメラルド結晶中の【Cr_(3t)】イオンの光学的励起状態の緩和に関する予備的研究も行った。ともに電子・格子の強結合に関連するものである。
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