研究概要 |
惑星形成に関する京都モデルによれば、集積期の原始地球は3つの層から成っている。石質・金属質の混在した原始中心核,それを取り巻く溶融金属層,そして最外殻の溶融石質層の3層である。重い金属が中間に位置しているこの状態は力学的に不安定で、内部運動が励起され、中心が金属で置きかわって現地球のような安定な密度成層構造になると予想される。この地球中心核の形成過程を追跡するのが本研究課題の目的であった。 まず原始地球の安定性が線型摂動解析によって調べられ、球状自己重力系の不安定解析の一般的手法が定式化されたとともに、原始地球はレーリー=ティラー型の不安定性を有し、不安定モードの発達は自由落下時間の数倍という速いものであることを見出した。この結果、集積途上の原始地球はその質量が現在の約1/5まで成長すると一部溶融が始まり、同時に溶融した金属が中心へと集まること,従って、現在の地球中心核は集積とともに形成されていったこと,が明らかになった。 さらに、原始地球溶融の原因である原始大気の構造と進化が詳しく調べられ、原始地球の質量が現在の1/5〜1/6にまで成長するとその表面近くは溶融すること,原始大気は地球集積の末期近くまで存在していたとすると現在の地球大気のXeパラドックスを説明できることが示された。この結果、安定性の解析で前提とした"溶融した原始地球"が現に存在したことが明らかになった。 本研究成果を更に進めて、集積し、質量が増大しつつある原始地球での金属中心核の動的成長過程を数値シュミレーションで追跡することも興味ある問題である。今後この問題を解決し、更にその後の地球内部進化も調べていく計画である。
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