研究概要 |
近年、宇宙科学や宇宙開発の進歩に伴い、地球を取り巻く宇宙プラズマに人工的擾乱を与え、その応答を計測することにより宇宙プラズマの非線形応答を明らかにしようとする宇宙能動実験が盛んに行なわれている。しかしながらこれらの宇宙能動実験で得られる情報は空間的時間的分解能や再現性に乏しく物理過程の詳細についての充分な知見を得る事は困難である。これを補い宇宙能動実験にかかわるミクロ物理過程を明らかにする手段として、我々は電磁粒子コードによる計算機実験を行なった。従来、我々が開発してきた京大電磁粒子コード(KEMPO)は世界に広くその有用性が認められてきたが、今回これを更に改良し、周期境界のみならず自由境界も取扱えるようにし、且つシミュレーション空間内に置かれる物体の内部境界の新しい取扱い法についても新たな開発に成功した。この改良KEMPOコードを用い数多くの計算機実験を実行し、次に述べる新しい知見を得た。 1.有限直径,有限長の電子ビームは宇宙プラズマ中に注入された場合、ビーム雲の前面に電気三重層が形成されるため、初期注入速度より遅い速度で進行する。その遅れ具合はビーム密度の関数として評価された。ビーム注入に伴いホイッスラー波、LHR波、UHR波が空間的に非一様に励起されると同時に、ビーム及びプラズマ粒子が加速加熱つれる。 2.長いテザーで結ばれたシャトルと衛星システムをモデル化し、そのシステムが地球磁場を横切る時に発生する高圧起電力による波動発生メカニズムを明らかにし、将来の宇宙能動実験の予測も行なった。 3.高速プラズマ中を航行する人工衛星自体が与えるプラズマ擾乱についての計算機実験の結果、光電子放出に伴う衛星電位の変動、航跡周辺のプラズマ波励起機構及びそのスペクトルに関する新しい知見を得た。
|