研究概要 |
1.昭和61年度の中心課題であった川井地域における野外調査・室内における岩石の化学分析などはほぼ当初計画に従って進められ、川井地域における"早池峰構造帯"周辺の岩相分布・地質構造の基本的枠組みが明らかにされつつある。また、釜石地域の予察的調査も行なわれた。 2.川井地域では、下位より、塩基性〜超塩基性岩類、主としてドレライト・玄武岩よりなる小黒層および薬師川層の順に整合に重なるという、大沢(1983)によってたてられた層序が確認された。塩基性〜超塩基性岩類の化学組成に関するデータも集積しつつある。また、従来時代未詳であった、早池峰山南方の、薬師川層最上部よりシルル系を指示する化石を発見し、層序・構造論に新たな重要な資料をつけ加えた(永広ほか,1986)。すなわち、"早池峰構造帯"を構成する塩基性〜超塩基性岩類は、少なくともシルル系以下であり、"早池峰構造帯"周辺の古生界の"基盤"となっていること、"早池峰構造帯"は大局的にはこれらを核とする一大背斜構造をなしていることがわかった。さらに、大沢(1983)によって推定されていた「早池峰衝上断層」について、断層露頭の発見を含め、新たな知見を得ることができ、早池峰山系南麓地域では、基盤をなす超塩基性岩類と南側の古生層とは北側上りの逆断層で接することが明らかとなった(永広・大上,1987)。 3.釜石地域では、まだ予察的段階ではあるが、従来整合一連とされていた"石炭系"小川層中に不整合を示唆する層理の斜交現象を見い出し、また、不整合面の下位より、後期デボン紀を示す植物化石を発見し、従来の層序・時代論は大幅に改訂された(大上ほか,1987)。
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